vol.06 角田郁雄先生

“アーティストの情念までも再現するLINN KLIMAX DSの魅力 —背景にある技術と音楽再現力”

KLIMAX DS導入のきっかけ

私は、2005年ころから、積極的に、ハイレゾ再生の魅力をアピールしてきた。
録音にも携わってきたこともあり、当時、スタジオ仕様のデジタルインターフェースとMacを組み合わせた装置で、CDリッピングの音や、まだ数の少ないハイレゾ音源を再生した。業務用の機器なので、おおよそオーディオルームには似合わない姿。
それでもハイレゾ音源は魅力だった。
その後、2007年の暮れに、LINNからKLIMAX DSというネットワークプレーヤーが登場。いち早く、私はその音に触れることができた。

技術的にはデジタルプレーヤーのコアとなるマスタークロックの精度やNASを使用し、プレーヤーもネットワークに接続するという斬新な方法にも、オーディオの未来を感じ、興味津々であった。私はファイル再生で、重視しているのは、一番聴く機会の多い、CDフォーマットである44.1kHz/16bitの音が良いことである。
しかも、レコードに近い、豊かな倍音が聴けることである。
この条件が満たされなければ、88.2kHz/24bit以上のハイレゾ音源の音質に期待が持てないはずだと考えた。
DA変換精度の高さが関係してくる。
当時、このDSプレーヤーで、CDリッピングした音を再生して、驚嘆したのは、空間表現に優れ、音像の輪郭が明瞭で、倍音豊かな音質が得られたことであった。聴き慣れたCDを新たにリマスターしたかのような音の鮮度の高さも格別であった。これは、レコードから深い陰影までも再現する、愛用のSONDEK LP12の音質にも似ていた。試聴の結果、私はいち早く、導入を決定。もちろん、アップグレードしながら、現在も愛用しているのである。

独創的な技術

私は内部技術を探ることも好きである。導入の決め手でもあったので、ここで少し技術の説明もしておこう。私のアプグレードモデルは、現行のKLIMAX DS/Kと全く同様。内部では、独自のプログラムを投入したFPGAによるデジタル処理部を従来モデル以上に進化させ、超高精度マスタークロック1個が、入力されたデジタル信号のサンプリングレートに対応する高精度クロックを生成。入力されるデジタル信号をこれに同期させ、完全にジッターを排除している。次のステップとして、この高精度クロックに同期した全てのデジタル信号を384kHz/35bitにアップサンプリングし、ほんのわずかな伝送上の歪みをも排除し、高精度なDA変換を行う。これが、一連の流れである。書いてしまうと、簡単のように思われるが、内部を観察すると、DSプレーヤーには究極のデジタルエンジンが搭載されていることが、理解できるのである。

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またパソコンのLINN KONFIG画面を開くと、愛用のDSプレーヤーの種設定が可能である。例えば、インサーネットコネクターで点滅するLEDは、わずかながらも音質を劣化させるので、その点滅をOFFにできる。付属のリモコンも使わないなら、不要なリモコン回路をOFFにできる。
RCA出力とXLRバランス出力のどちらを、優先に使うのか、これも設定でき、最高の状態で、アナログ出力ができる。

こんなデジタルプレーヤーが過去にあったであろうか。
他では類を見ない高音質へ配慮が、されているのである。
私は、もう5年ほど、このプレーヤーとつき合ってきているが、もう一つの特徴は、ファームウェアのアップグレードにより、使い勝手が良くなるばかりではなく、音質も向上したことである。
LINNは決して、ここを良くしたなどと公表しないが、おそらくFPGAを使ったデジタルフィルターのアルゴリズムなどを変え、音を進化させたに違いないと推察している。常に進化するプレーヤーなのである。

またパソコンのLINN KONFIG画面を開くと、愛用のDSプレーヤーの種設定が可能である。例えば、インサーネットコネクターで点滅するLEDは、わずかながらも音質を劣化させるので、その点滅をOFFにできる。付属のリモコンも使わないなら、不要なリモコン回路をOFFにできる。
RCA出力とXLRバランス出力のどちらを、優先に使うのか、これも設定でき、最高の状態で、アナログ出力ができる。
こんなデジタルプレーヤーが過去にあったであろうか。
他では類を見ない高音質へ配慮が、されているのである。
私は、もう5年ほど、このプレーヤーとつき合ってきているが、もう一つの特徴は、ファームウェアのアップグレードにより、使い勝手が良くなるばかりではなく、音質も向上したことである。
LINNは決して、ここを良くしたなどと公表しないが、おそらくFPGAを使ったデジタルフィルターのアルゴリズムなどを変え、音を進化させたに違いないと推察している。常に進化するプレーヤーなのである。

独創的な技術に支えられた、ずば抜けた音楽再現力

こうした技術により、AACやMP3といった圧縮音源までも、CDクォリティーに迫り、CDリッピングの音も、24bitのハイレゾ音源に劣らぬ、自然な音の階調を示すハイレゾ的な音質へと進化した。例えば、ピアノの音の消え入るところなど、弱音に耳を傾けてみて欲しい。音が消え入るまで、透明で、美しさが維持されていることが分かるはずだ。微弱な音の再現性が素晴らしく、これが音楽に深みを与えてくれる。さらに、こうした、微弱な音は、例えば、マイルス・デイビスの鮮やかなトランペットの響きにも加わり、ベル(ホーンの部分)の響きが、より鮮やかになり、空気の流れまで見えるような、躍動感ある演奏を聴くことができるのである。ちなみに、私は夜、照明を消して、名演奏、名録音のCDリッピング音源を聴くことが多い。そこにあるのは、オーディオを忘れさせ、眼前に展開される生々しい演奏だけである。録音した場所、時間へワープした思いがするのである。
ハイレゾ音源が増えているとは言え、80年、90年代の往年のCDアルバムを聴く機会はまだ多いはずだ。こんな思いにしてくれるのが、DSプレーヤーだ。
さらに、ハイレゾ音源を聴けば、楽器や人の声が、さらにリアルな再現となる。私が若かりし頃聴いた、リンダ・ロンシュタットのWhat’s New。きめの細かい、絹糸をひくようなストリングス、鮮やかで輝くブラス、静かなドラムのブラシ、音楽をしっかり支えるベース、その中央に、ストレス無く、抜けるようなリンダ・ロンシュタットの声が聴ける。まさに、これはアナログマスターを聴く思いである。カーリー・サイモンのYou’re So Vain。これもなかなか、今まで、いい音で聴くことができなかった曲だ。これも、DSプレーヤーを通して聴くと、さらにその解像度の高さゆえに、楽器の立ち上がりや倍音を引き立ててくれる思いがする。カーリー・サイモンの声にも厚みを感じさせ、そのリアリティーが前面に表れる。奥行き感も良く表し、バックボーカルとの対比が素晴らしい。
DSプレーヤーは、先に述べた独創的技術により、単に高音質化だけに、とどまることなく、音楽に内包されたアーティストの演奏の姿までも、空間に実在するかのように描くところが凄いのである。弱音から強音まで躍動感をもって表す、高いドライブ力もデジタルプレーヤーとして、大きな魅力である。
この素晴らしい音楽再現力は、DSMシリーズへも、洗練されたKIKO DSM システムにも生かされている。
ぜひとも、この音楽表現の深さを一度、体験して欲しい。
きっと、どのモデルも、洗練されたデザインゆえに、所有の喜びまで、感じてくれることだろう。長く愛用できること。これはレコードプレーヤー、SONDEK LP12が証明してくれている。

LINN DSプレーヤー使い方の工夫など

リンジャパン:「どんな音楽ジャンルが好きですか。」

「小さいころから、いやって言うほどクラシックを聴かされまして、今でもクラシックが中心ですが、その他に若かりし頃、好きだったロックやジャズも聴きます。最近のEMI クラシックスやワーナーのハイレゾ音源は良いですね。CD リッピングですが、ジャズでは、マイルス・デイビスやBlue Note のアルバムが好きですね。LP も聴いています。
現在は、4TバイトのNAS と4TバイトのバックアップNAS、試験的にSSD NAS を使っていますが、そろそろ増設しないといけないなと思っています。」

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リンジャパン:「何か、DS再生で、こだわりの工夫をされていますか。」

「私は、ハイエンドなスタジオに行く機会もあり、部屋は、その設備仕様に近い再生環境になるように工夫しています。仕事がら、色々な機器をテストしますし、DSプレーヤー再生でも、歪み感のない、その場で生演奏しているような躍動感あり、透明度の高い音質を求めます。

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まず大切なのは、電源です。純アナログ方式のクリーン電源を使用しています。電源の歪みもゼロ近いですから、機器本来の音が発揮されるようで、ドラマティックに音質が向上します。
次が、アースです。私の環境では全機器の電源アースをとると、音場がやや狭まった感じがするので、やめました。たぶん、アースがループしたためと推定しています。
いろいろと実験した結果、DSプレーヤーをアース接続できるオーディオボードにセットし、部屋の床下点検口の直下に5本のアース棒を打ち、これにもアースしています。
LP12の電源もこれにアースしています。

他の再生機器も使いますので、プリアンプの筐体もアースしました。つまり、DSプレーヤーとプリアンプを壁の医療用アース端子に一点アースです。
DSプレーヤーは音源を再生する最上流の機器ですから、インピーダンスの低いアースは、微細なノイズを排除し、より透明度の高い音質が期待できます。
結果として、私の環境では、電源とアースは成功しているのではないかと思います。
深く沈み込む弱音再現がたまりません。
ノイズフロアーが下がったイメージで、密度と繊細さが増大し、ハイレゾ音源はもちろん、CDリッピングでも、ほとんど、DSDに酷似するサウンドとなりました。たぶんFPGAによる354kHz/35bitのアップサンプリングの効果が、さらに発揮されたと実感しています。

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ちなみに、マンションなどで、アースがとれない方には、機器とアースがとれて、ノイズを低減するボードも発売されているので、一度借りて、効果を確かめても良いのではないかと思います。
参考までですが、DSプレーヤーからパワーアンプまで、全段バランス接続で、ラインケーブルは単線です。
透明度の高い空間、倍音豊かなリアリティーある演奏を求めると、今のところ、シールドされた単線ラインケーブルが良いかなと思っています。
こんなところでしょうか。

リンジャパン:「今までのコンポーネントと同様に環境に合わせた使いこなしが大切ということですね。
         貴重な研究結果を皆伝して頂きまして有難うございました。 」

オーディオ評論家 角田郁雄先生

著名なDSマスターに登場していただき
DSを導入した決め手!そして、楽しみ方を皆伝して頂きます。