vol.02 大萩康司さん(ギタリスト)

LINN との出会い、あるいは実際にシステムをお使いいただいている感想をお聞かせ下さい。 留学している時は、そんなにいい装置は使えなかったんですけど、高い棚に置いて上のほうから音が聞こえて来るのが好きでした。あれこれいじるのは好きだったので、どこに置いたらどういう音がするのかなと、いろいろなところにスピーカーを置いたりしてみました。

以前からDさん(サウンドマック福岡)にはお世話になっていて、LINNの音は聴かせてもらっていました。 まさに演奏している場所に自分が行って、スピーカーとスピー カーの間に演奏者が居るような感じがして、これは何だろっていう驚きがありました。今まで自分がCDを聴いていて思いもしなかったことだったので衝撃的でした。

NINKAが家に届きセッティングしてもらっている間に、焦点・・・音の輪郭が少しずつ固まってくるのが見えたんです。音の変化はとても大事な要素の一つだけれど、それよりもスピーカーの置き場所ひとつで音楽の表情も、ものすごく変わるんだなと実感したんです。

でも、そういう変化を明確に表現してくれるのはLINNだからと思うし、家でとてもびっくりしたのは、重低音と呼ばれるコントラバスなどの低い音程がしっかり聴こえてくること。 いわゆる大型のモニタースピーカーで低い周波数の音を聴いたとき、音程の感じが鈍ってくる感覚がするんです。

でもLINNのスピーカーではそれを感じなくて、こういうふうにちゃんとはっきり聴こえるものなんだ、と改めて感動して、LINNのスピーカーをぜひ欲しいと思ったんです。 それと、ずっと聴いていられる点も気に入っています。自分がギターを弾いているときも、弾いていると疲れる楽器があるんですね。手が疲れるのではなく、耳が疲れる。少し経つとこれ以上は弾きたくないなとギターを置いてしまうような楽器があるのですが、名器になると何時間弾いていても飽きない、疲れない楽器があります。それと似た感があります。

高名な楽器でも自分に合う、合わないというものがあるのですか。 あると思います。自分では絶対弾かないだろうなという楽器を弾いている人ももちろんいるし、ただ音が大きいだけとか、派手で最初聴いたときのインパクトはあるけれど、それを2時間3時間聴きたいですか?と言われると自分としては聴きたくない。どこを弾いても同じ音色が出ている。強弱の表現よりも、音量というか、ボリュームが果たして必要なのか。音楽のダイナミクスというのはゼロからどこまで、100とか200までとか限定されるのではなく、一つ一つの音の間にどういう内容が含まれているのか、というのが大事だと思います。 楽器にしても、もし一番大きく掻き鳴らしたときの音のMAXはそれほど大きく感じない楽器でも、音量とか音質とか、それが1から100まで段階があるものよりも、実際に聴いている音量にさほど差がなくても、内容が濃くて、もっとダイナミクスを感じることができる楽器が好きです。

オーディオも控えめな音量の中でどのくらいのニュアンスが表現できるかどうか・・・ オーディオ装置の多くは、音量を小さくすると聴こえない音があったり、音量を大きくするとうるさく感じる。それを感じさせないオーディオがこれです。 深夜のまったく静かな時に、音量表示の2とか3くらいで流していても、少し時間が経つと音楽が全て聴こえるようになる。それがとても気持ち良い。もちろん音を大きくしてもうるさく感じないし。

pic03引っ越された新しいお住まいでよくお聴きになるCDを紹介していただけますか? アンドレ・セコビアの“デディケーションズ”というCDです。 セコビアのために書かれた曲をセコビア自身が弾いているものを集めたCDです。 最近出たのですが、演奏はもちろん1950年代のものだったり、年数はバラバラだったりしますが、そういう演奏が間近に聴けるのでありがたいなと思います。亡くなってしまった大家の演奏でも、ギターだったら6本ある弦の、どの弦で弾いていたのかなというのが装置が良くなると少し分かるんですね。Dさんにセッティングしていただいて、ギターソロのCDだとしたら、真ん中に人がひとり居る感じになるんです。 そして、どの爪で、どういうポジションで弾いているのかが見えてくる感じなです。だから自分にとって、それがギターの先生と同じくらいとっても価値があるものになりました。

LINNのシステムにされて生活に変化がありましたか? 大きく変わったと思います。自分が今まで聞き流していたテレビから流れるCMの音楽も、こんなにいい音を使っていたのかと思うものもあれば、一方には雑なノイズが入っているCMもある。 それは今まで自分がテレビを観ていて思いもしなかったことで、それが衝撃でした。それに、人と人との出会いで知ることが、音楽を通せばより明らかになる気がします。

pic02選んだシステムは、これはこれの存在感があって見ていてもいいですしね、色も自分が好きな落ち着けるもので、チェリーの仕上げを選んでるんですけど、音が鳴ってな くてもこの空間は自分の大好きな空間です。だからこれ以上はコンパクトにし過ぎないでくれっていうか。それとはまた正反対に、できればLINNから携帯できるものでこれくらい上質なものを提供してくれたらすぐに買ってしまうんじゃないかな。 それがヘッドホンでもいい。夜中、家の中で爆音で聴きたいときにヘッドホンがあれば便利だから。

音楽は、たとえば映画のワンシーンのように、ふとした拍子に自分がそこに居た状況を思い出したり、好きだった人のことを香水の香りが思い出させたりするような作用をすることがあります。良かったもの、感動したものは自分の中で思い起こすことができる大事なものですね。落ち込んで、この先どうしたらいいのかな、と思ったときに助けてくれるのは人ではなくて自分の場合は音楽だったということがとても多いので、音楽が自分の仕事になっているのは本当にありがたいことだなと思っています。

ご協力ありがとうございました。(取材協力:サウンドマック 福岡)