そこに2015年のKUNIKO がいる。
Iannis Xenakis (ヤニス・クセナキス)が6人の打楽器アンサンブルのために作曲した“プレイアデス”と、打楽器ソロのための“ルボン a, b”を収録した作品を本年4月、Linn Records からリリースしたKUNIKO が自らプロデュースする音楽と映像のライブインスタレーション・パフォーマンスが東京に戻ってくる。
演奏至難なパートをいくつも収録してゆく孤独で緻密な録音作業、スコアを読み解き一つの作品として練り上げてゆくために全く気の抜けない編集作業。そうした常人の想像を超えるハードワークに加え、各パートを捉えた動画も総動員してクセナキスのイマジネーションを現実空間に出現させるライブインスタレーション。
“プレイアデス”というスコアがいかに繊細でダイナミックな音宇宙を秘めていたのかをKUNIKO が解き明かす。私たちの周りで音が生まれ交響し、全く新しい時空を共有する歓び。
そして、圧巻の“ルボン”があなたを身じろぎできなくする。繰り出される「音」はうごめくリズムの波動。「言葉で表現できなくなったとき音楽が始まる」、というドビュッシーの名言を引けば充分だろう。
先月には、「傘寿を祝う」と題して2夜にわたり、S. ライヒ、A. ペルトの作品を中心にしたコンサートで、聴衆を魅了した彼女が、改めて世に問う本公演にいやがうえにも期待が高まる。
打楽器奏者としてのポテンシャルを極限まで発揮し、近年のアーティストとしての充実した活動の総決算ともいうべき2015年KUNIKO のProject IX。ライブ空間で「音楽」の誕生を目撃できる幸せを。
語り継がれるステージがある。
それは、音楽だけにとどまらず、様々なジャンルで真に画期的な出来事として、突出した価値のある「事件」であるが故、後々まで記憶され、折に触れ人々の間で新しく甦る力を備えている。
その場に居合わせることができる特権。
見過ごすにはあまりに口惜しい絶好の機会だ。
http://www.kuniko-kato.net/ja/project/project-ix-pleiades/