DSに搭載されているオーディオクロック発振素子（Oscillator）は、非常にジッターレベルの低いとても優れたものです。しかしながら一般的なクロックシステムの場合、発振器から出力されるクロックは、供給先までの間に存在する（例えたった一つであっても）ロジックゲート（ロジック回路）を通過するだけでジッターを付加させてしまいます。場合によっては元の100%増、つまり倍増させる結果を生んでしまいます。

ジッター発生の要因は、ロジックゲートへの給電経路に起因するノイズである事が発見されました。このノイズが、一つ一つのクロックエッジのタイミング偏差（不安定さ）を起こしていたのです。

解決策は、非常にシンプルなものです。Linnは、発振器とDACの間に存在する全てのロジックゲートを排除してしまいました。 この設計変更がKLIMAX DS基板上の実測値で10.3354ps→5.6675psというジッター低減に貢献しています。つまりおおよそ半分まで減らすことに成功したのです。同じ変更が、他の３つの新製品にも施されています。

DACチップはたった一つの構成部品でしかなく、言うまでもなくデジタル→アナログ変換セクションとは、製品全体と連携した複合的なシステムです。実際、デバイスとしてのDACチップは、初代DSから新型に至るまで変更されていません。Linnが使い方をよく知る、非常に高性能なDACチップです。しかしながら、新製品では新しい回路レイアウト技術を用い、トランスペアレント・プレーヤーと言われた従来機をさらに凌ぐ低歪特性を実現しました。世の全てのDACチップは、アナログ音声出力のリファレンス（基準）となる、自身へのアナログ電力供給に対してとてもセンシティブです。元の電源がクリーンであるというだけでは十分ではありません、DACに送り込まれる基板上の電源ルートも深く考慮される必要があります。電源ルートのわずかな変更であってもDACのパフォーマンスに大きな影響を与えます。つまり回路図上では同じであっても製品設計の優秀さで製品の洗練度は向上するのです。

オーディオ製品では類例を見ない8レイヤーの基板を駆使し、立体的にマッピングされる新型DSの回路レイアウトは、KLIMAX DSフラッグシップ・プレーヤーの製品設計に関する8年以上の経験・研究の結果であり、また最新のLINNの成果なのです。

今回のモデルチェンジにより、新製品4機種にExakt Linkポートが装備され、将来的なExaktシステムへのシンプルなアップグレードが可能になりました。DS〜プリアンプ〜パワーアンプ〜スピーカーという従来スタイルのオーディオシステムから、Exaktスピーカーを使ったシステムへの変更・発展がスムーズに行えます。この端子は、メイン基板のデジタルセクションにレイアウトされ、デリケートなアナログ回路セクションとの干渉をなくしています。