オクダ少年、1959年10月23日生

待望の単行本が刊行されました。
奥田英郎著「田舎でロックンロール」(角川書店)がその一冊。


己の不明を恥じれば、著者の奥田英郎さんの他の作品を手にしたことも無く、
まして「小説 野生時代」誌の存在には目もくれず過ごしておりましたので、
この春、とある方のご厚意でこの連載があることを知らされ、
しかも初回からの既出分をコピーでお手渡し下さったのがそもそもの始まり。
ともかく「巻を措く能わず」の字義通り、文章に一気に引き込まれ、
翌月号を早く読みたいとまで思うようになってしまいました。
その連載もこの八月に終了、短編が一つ加えられて。


1959年生まれのオクダ少年の「1972~77年までの、わたしの洋楽青春期を綴ったもの」
(あとがきからの引用)とまとめることもできますが、流石に本職の作家の方が
「楽しい仕事だった」とこれまたあとがきに記されている通り、本当に面白く読めて、
その上であらためて音が聴きたくなる衝動にかられること、請け合いです。
ロックにどのようにして出会ったか。それは教科書が教えてくれない、今とこれからを手さぐりで掘り当てていく泥臭い作業であったかもしれません。
世代や地域で趣味や嗜好が異なることは否定できません。

しかしながら、この本が素晴らしいのは、オクダ少年がロックを手繰り寄せ成長する様子が、
一人の聴き手が音楽に選ばれる物語として、コミカルなタッチも織り交ぜて、
ロックファンにはもちろんのこと、門外漢にも楽しめる読み物になっているところでは
ないでしょうか。その上で、1970年代の洋楽受容についてのドキュメントになっていることも
見逃せません。ひとはどのようにかして音楽と出合い、それを年月を超えて大切なものとする、
その不思議をあらためて気づかせてくれるのです。


大人になったオクダ少年は、嬉しいことにアナログレコードの再生も復活させて、
おまけに中古レコード店巡りもなさっているご様子。
ついでに、良い音で音楽を聴く醍醐味にも言及されたり、タイトルを見ただけで
読まないでいるのはあまりに勿体無いのでは、と音楽に夢中になった時期を
過ごされたことのある方々に声を大にしてお伝えしたい快作です。


「田舎でロックンロール」。


スコットランド、グラスゴーでオーディオ製品を作り続けているLINN も
そう呼べるかもしれません。

音楽のジャンルによる分類ではなく、音を通じて新しい世界に触れること。
どこにいても、いつであっても、広いこころを持ち続ければ新しく音楽と出会える。
そんな希望も湧いてきます。

LP12で聴くロックのレコードも格別ですからね。


2014年11月 m.f.

☆DSC_0981KIKO

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