快挙と言わずして

この10月20日にリリースされる一枚のLPレコード。それは、長く語り継がれるものになるだろう。加藤訓子、いやむしろ、Kuniko という名称が世界中で通用する素晴らしいパーカッショニストの演奏によって新たな価値を得たスティーブ・ライヒの「カウンターポイント」作品が両面に刻まれている。

ここに至るそもそものきっかけは、ライヒの楽曲を、音楽家として最上のかたちで演奏したいという一人のアーティストの切なる願いと、スコアの理想的な再構築を目標にアンサンブルのために書かれた全てのパートをともかく最上のクオリティで録音してしまう、という実行力
192/24 で録音されたマルチトラックの編集作業がきっかけとなり、録音作品として完成を見るまでにはエンジニア達やLinn Records との幸福な出会いがあり、2011年、”kuniko plays reich”(CKH 385) が世に出たのです。たちまちに、ディスクはもちろん、スタジオマスター音源も高評価を獲得し、同年のレーベル・ベストセラーとなりました。
第二作として昨年発表された”CANTUS”(CKD 432) にもライヒは一作収録され、ここでも、卓越した演奏のみならず、スコアリーディングから編曲、さらには各パートの録音に引き続く編集仕上げという、粘り強くも精緻な作業が、リスナーに届く心地よい音の重なりや連なり、溶合う響きの向こう側では繰り広げられています。

「私の音楽」が確実に世界中で評価される、ということ。メジャーレーベルが凋落した今、才能豊かな音楽家の演奏を余すことなくリスナーに届けたいというLinn Records のポリシーがKuniko の作品達の真価を新しい聴き手にアピールできた結果、この度のレコードリリースが実現するのです。音楽を、オーディオを、絶えず新たに進化させているLINN からの、懐古趣味とは無縁の新譜LPを嬉しいプレゼントとして素直に喜びたいと思います。

音楽家の心が込められた作品のグローバルリリース。小さなレーベルの大きな仕事。ジャンルで分類し枠にはめることで馴れあってしまう音楽を超えて、時代を共にできるアーティストの演奏に触れ、さらには次作にも思いを馳せることを忘れないために、一枚お手許に置いてあってしかるべきかと。

m.f.

DISCOGRAPHY
CKH_485
CKD432「CANTUS」CKD385「kuniko plays reich」


Reich: Counterpoint LP(CKH 485)
に寄せて