EXAKT digital filter

「オーディオ」は全く新たなステージに入っている。
今、私たちは既に革命後を生きている。

EXAKT digital filter (イグザクト・デジタルフィルター)発表会のために来日した
LINN のチーフエンジニアとKEF の音響セクション(=アコースティック)のヘッドエンジニアと
過ごした短いながら充実した時間の中でそれを確信する。

ロスレスなデジタル伝送を活用し、「音源をスピーカーの中にまで」届け、
録音の現場とリスニングルームの隔たりを一気に短縮し、
圧倒的な音質の音楽再生を可能にしたLINN EXAKT テクノロジー。

マルチウエイのスピーカーのドライブユニットから放射された音波が
空間で再合成されリスナーの耳に届くことで閉じる録音と再生を巡るひとつの環。

従来のパッシブ・クロスオーバーでは実現できない、
歪の無い帯域分割と発音のタイミングを管理できる群遅延を駆使した
デジタル・クロスオーバーの利点に加え、
ドライブユニット自体で発生してしまう歪をも予め補正して、
スピーカーシステムトータルの音楽再生能力を初めて開花させるEXAKT digital filter。

既発表のモデルも含めLINN スピーカーシステムには勿論、
他メーカー製品用として最初にB&W Nautilus 向けに開発され、
EXAKT digital filter の効果の程はユーザーにも浸透し始めている。

今回、LINN が新たに発表したJBL S9900 のEXAKT digital filter と共に、
KEF Reference 5 専用のそれが、EXAKT テクノロジーの新しい展開として大注目だ。

自らの創り上げたスピーカーシステムに、LINN オリジナルのツールを駆使して完成させた
デジタルフィルターを導入するということ。
それは、既存のパッシブ・クロスオーバー完成品の設定値を単に置換するものではなく、
ドライブユニットの実際の挙動をも見据えた、スピーカーシステムのゼロからの設計開発。
つまりは設計者の責任、KEF のフィロソフィーが全く新しいデジタルフィルターによって
問い直されるという、メーカーの壁を超えたブランドパートナーシップの創造的な試み。

KEF のエンジニア、Dr. ジャックは言う。

「フェイズリニアな再生とポイントソースについてKEF は長年にわたって培ったノウハウがあり、
デジタル・フィルターを使うことには大変興味がありました。」

EXAKT テクノロジーをオープンなものにしたいとの思いで、
採用を提案するのに最適なブランドは先ずKEF、との判断で始まったLINN からのアプローチ。
ブランドの垣根を超え、エンジニアとして、蓄積されたノウハウと
新しい技術的チャレンジの融合が実を結び、ミュンヘンでのデビューに次いで
東京でのデモンストレーションが実現。


EXAKT digital filter を創り込む上でこれまで30機種以上のスピーカーシステムの
製品化のプロセスとの一番の違いは?との問いに、
「パッシブ・クロスオーバーの設計との最も大きな違いは、
求める性能に近づけるために何ができるかを突き詰め試行することではなく、
桁違いに多いパラメータの調整項目のうち、求める音のために何をすべきか、
そうでないかの見極めこそが大切。とは言え、
調整を反映した音が出せるまでにはわずかな時間しか必要としないため、
カット&トライの回数は飛躍的に増えるので、イメージがぶれないようにするところには
熟練が必要かな」、とにこやかに具体的な苦労話で答える。

肝心のEXAKT digital filter を使った音の変化についても、
「Reference 5 の特徴自体を変化させるものではないけれど、
自分にとってはより生気がみなぎっているよう(=Life like)に感じている」、
との嬉しいコメントを寄せ、しかもこれがゴールではなくて、スタートだと捉えているとのこと。
自ら最良のパフォーマンスを与えたスピーカーが姿はそのままに、
さらに生きいきと音楽を奏で始めている。魔法のような光景は、
先進のEXAKT digital filter がもたらしたものだ。

そこに私たちが初めてLINN KLIMAX DS を目の当たりにした
2007年に感じたような戸惑いはもはや無い。

EXAKT テクノロジーからの新たな芽吹き。
一たび体験すれば、誰もが快哉を叫ぶはずだ。



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